The side of Paradise ”最後に奪う者”
「手伝えよ」
無言で肩をすくめている。
作り始めた涼の様子を、綺樹はスツールに腰掛けて見ていた。
「慣れてるな。
ここでも作っているのか?」
誰かに作ってあげているのか。
だから藤原は変な顔をして、涼は流したのか。
いや、なんだって私は今更気にしているのだ。
苦笑する。
「時々な。
外飯は胃が疲れるし、ここで作ってもらう飯も時々食べたくなくなる。
自分で作ったものが無性に食べたくなる」
綺樹は調理台に頬杖をついた。
「よくわかるよ。
外の食事は胃が受け付けなくなる。
一緒に暮らしている時も、おまえの作った物ぐらいしか、食べられなかった」
「ああ、そうだったな」
涼は身を屈めて鍋を出しながら、ちらりと綺樹を見上げた。