The side of Paradise ”最後に奪う者”

「汚れるぞ」


綺樹は止めなかった。

涼が一瞬体をこわばらせた。


「おまえって素敵」

「この状況で全くわけわからん」


綺樹はくつくつと笑った。


「これで二人ともまた風呂だな」


涼は綺樹を抱き上げてバスルームに運ぶ。

新たにお湯を張りながら二人して浸かった。

涼の足の上に座り、よりかかり、頭を肩にもたれさせた。


「ああ、これは楽ちんだ」


くつろいだ様子だった。

涼は微笑して見下ろすと、もはやうとうとしていた。

綺樹の体力の衰えは恐ろしいぐらいだった。

出会った頃や1回目の結婚の頃の10代のイメージが強いからだろうか。

いや、2回目の結婚の時だってこんなではなかった。

あの夏。
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