The side of Paradise ”最後に奪う者”

「涼」

「ん?」


涼は新聞を見ながら生返事をした。


「断わったとして、生まれた時に一度ぐらいは抱っこしてもいいだろうか」


顔をあげてしばらく綺樹の顔を見つめていた。


「ああ。
 もちろん」


涼は目玉焼きの白身を箸でとった。


「と、いうより、おまえが母親なのを隠すつもりは無い。
 いつでも自由におまえが会いたい時に会いにくればいいし、子供もおまえに会いたい時に会いに行くのを止めない。
 お前の方と一緒に暮らしたいというのは駄目だけど」


綺樹は口に入れたパンを飲み下した。


「では聞くけど、私たちが一緒に暮らしていない理由を何て言うんだ?」


涼はいたずらっぽく笑った。


「パパはママを愛しているのに、一緒に暮らしてくれないんだ」

「私が悪者かっ」

「まあ男女間のそういうのが理解できるまではそうだな」


涼は楽しそうに言った。
< 785 / 819 >

この作品をシェア

pagetop