The side of Paradise ”最後に奪う者”
「涼」
「ん?」
涼は新聞を見ながら生返事をした。
「断わったとして、生まれた時に一度ぐらいは抱っこしてもいいだろうか」
顔をあげてしばらく綺樹の顔を見つめていた。
「ああ。
もちろん」
涼は目玉焼きの白身を箸でとった。
「と、いうより、おまえが母親なのを隠すつもりは無い。
いつでも自由におまえが会いたい時に会いにくればいいし、子供もおまえに会いたい時に会いに行くのを止めない。
お前の方と一緒に暮らしたいというのは駄目だけど」
綺樹は口に入れたパンを飲み下した。
「では聞くけど、私たちが一緒に暮らしていない理由を何て言うんだ?」
涼はいたずらっぽく笑った。
「パパはママを愛しているのに、一緒に暮らしてくれないんだ」
「私が悪者かっ」
「まあ男女間のそういうのが理解できるまではそうだな」
涼は楽しそうに言った。