The side of Paradise ”最後に奪う者”
「ちょっと待てよ。
妊娠が確認できてからだろう」
「そういえば、おまえ結婚指輪は?」
綺樹は口をつぐむ。
「とってあるよ」
「捨てられたかと思ったよ。
じゃあそれで済むな」
「おまえ、聞いてるか?」
小さな悲鳴に近くなってくる。
涼は綺樹のあごに指をかけると、くちびるを合わせた。
「はい、これで成立。
指輪は後で出して置けよ」
「涼!」
笑い声をたてながら涼は歩き出した。
「あ、もう一つ要望を忘れていた」
「なに」
涼についていくために早足になる。
「おまえも当然駄目だからな」
「なにが」
「火遊びと愛人」
涼がちらりと振り返る。
顔は笑っていたが目は射るようだった。
やっぱり瞬のことは、かなり腹に据えかねているようだ。