The side of Paradise ”最後に奪う者”
 
   *

綺樹は大学の仕事を終えて、涼が待っているだろう、いつもの場所に向かおうと思った。

いいのか。

迷ってコートを着たままで、また椅子に座った。


「どうした?
 上がるんだろ」


高木が入り口近くのパイプ椅子に座ったままの綺樹を、不思議そうに見た。


「時間つぶしか?」


綺樹はバックを手繰り寄せた。


「いえ、上がります」


そう言いながらも綺樹は動かなかった。

バックの取っ手をいじくり回す。

考えがまとまらなかった。

さやかにはどう話そう。

ダバリードもないし、ウルゴイティもない。

だからいいのだろうか。

涼と関係を戻していいのか。

今まで、何度も縒りを戻しては離れるの繰り返しだ。

またじゃないか。
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