The side of Paradise ”最後に奪う者”
綺樹の携帯が鳴った。
心配をした涼からだった。
「ごめん、今行く」
携帯をしまいながら、まだ立ち上がれなかった。
なぜこうも決められないのだろう。
「喧嘩したのか?」
高木が何かを察したらしい。
綺樹は顔を上げた。
「いえ。
その、そうじゃないんです」
高木がしばし綺樹の顔を見て笑った。
「おまえたちは根本が、夫婦だ。
法的にどうなっていようと、距離がどんなだろうと、関係がどうだろうと。
だから気楽でいることだな」
綺樹は視線を下げて呟いた。
「根本が夫婦」
「表面上の関係や、外聞をあまり気にしないことだ。
涼の浮気も含めて」
高木は違うことと勘違いしているらしかったが、綺樹は正すことはしなかった。