The side of Paradise ”最後に奪う者”

駆けるような足音がして、ドアが乱暴にノック無しに開いた。


「先輩、綺樹。
 って、心配しただろう。
 途中で倒れたのかと思ったぞ」


ドアを開けたそこに座っているのに、涼は肩の力を抜いた。


「さ、行くか」


綺樹が顔を伏せたまま立ち上がれないでいるのに、高木は歩き出している涼を呼び止めた。


「涼、ちょっと」


不審そうな顔になってから、招かれるままに隣の書庫に入った。


「彼女、ちょっと戻ったな。
 まあこの病は波がある。
 何か決めさせようとしているようだが、決められない上に、その自分に焦っている。
 少し待ってやれ。
 余計に悪化するぞ」


涼はふっと肩の力を抜いた。


「わかっています。
 わかっているのですが、あまり悠長なことはしていられない状況で」


涼はドアをみやってから、高木と視線を合わせた。


「今は綺樹に、彼女自身のことでも、決定を委ねてはいられないんです。
 強引にすすめます」


高木を振り切るように、涼は綺樹の元に戻ると腕をとった。
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