The side of Paradise ”最後に奪う者”
「何を検討するんだ?」
「なにって」
改めて問われて当惑する。
「検討することなど何も無い。
おれは二度と離婚する気はないし、子供も生まれる。
もう二度とだ。
二度と手放さない」
苦しみを吐き出すように言い捨てる。
綺樹は茫然とした様子で涼の目を見つめていた。
揺るがない意思の宿った目。
そこに涼の朗らかな性格に反した、暗い部分が見える。
涼は片手を伸ばして、綺樹の頬を包んだ。
軽く目を閉じて開く。
もう影は消えていた。
「もう二度と手放さない。
絶対に」
穏やかに微笑し、柔らかく、だがそれは、きっぱりとした宣言だった。