The side of Paradise ”最後に奪う者”
「これで終了ですね。
では失礼」
立ち上がりじゅうたんを踏む音がした。
終始一貫してそっけなかった。
こちらが思い出していないという落ち度があっても、元夫婦の再会とは思えない。
憎み合って別れたわけじゃないだろう。
思い出話をしろとも、愛想よく会話を交わすとも求めないけど、何か一言あったっていいのではないか。
視線さえ合わなかった。
そこまでの存在の無視に涼は腹が立ってきた。
「ミズウルゴイティ」
その強い呼びかけに足を止めて振り返った。
綺樹は挑むような涼の目を受け止める。
涼は担当者がたじろいだ意味を知った。
吸い込まれそうだ。
こちらの隠している感情や本心を見透かれそうだった。
涼は少々気圧され気味になり、口調を弱めた。