The side of Paradise ”最後に奪う者”
低音が響くエンジン音を背中で聞いていた。
予想通りタイヤを軋ませて止まり、叩きつけるようにドアが閉まる音がする。
「綺樹」
射るように呼ばれた。
綺樹はため息を一つついて薄く笑い、瞬と視線を交じらわせた。
「ひどい女だろ?」
瞬は無色の目でじっと見つめ返した。
そんなことは、とっくに知っている。
「じゃあ」
背を向けて、車の横に仁王立ちをして、睨んでいる涼に向かって歩き出した。
「綺樹」
柔らかい物言いに振り返った。
その後に暴言が続くのを覚悟していた。
瞬はにこやかに笑った。
「つまりは、当分は日本に残るということだね」
綺樹は肩越しに見つめ返す。
「ああ」
瞬の反応の予想がたたず、慎重に答える。