The side of Paradise ”最後に奪う者”
「今日はお忙しいところ、ありがとうございました」
全て見抜いたのだろう。
口の両端が持ち上がって、皮肉っぽい笑いを作った。
「どういたしまして、ミスター西園寺」
一瞬で視線が外れて、ドアが閉まる。
凍り付いていた空気が動き出して、担当者同士が談笑を始める。
涼は年下の、しかも女性にたじろいだのに面白くなく、睨むようにドアの外を見ていた。
ドアに入っているガラスのスリット越しに綺樹が立ち止まったままなのが見える。
誰かと話をしている。
少し身動きすると成介の姿が見えた。
綺樹の頬の線が柔らかくなっている。
何の話をしているのか。
綺樹の目がいたずらっぽくなった。
今までのビジネスでの顔と全然違う。
間近で見たかったが動けなかった。
顔の表情が止まったと思ったら、瞬後微笑が顔に広がった。
花開くようだ。
彼女の笑顔を見て、涼も自分の口元が緩んだのに気が付いた。