The side of Paradise ”最後に奪う者”

ホテルのレストランでそのまま遅めの夕食をとる。

春香は名前の通り、厳しかった冬の後の、きらめいた光とあたたかな風の雰囲気がある。

仕事の後に会うと心から和む。

彼女が西園寺の家で待っていてくれる。

想像しないわけではなく、そうしようかと決断しかける時もある。

先ほどの商談で受けたダメージを癒していると、今日の仕事のことを聞かれた。

一瞬、あの女との過去を知っているのか邪推しかけたが、さり気ない様子
で、海外企業との契約だったというと、それだけで納得していた。


「契約だから気を遣われたのね。
 なんだか疲れていた様子だったから」


涼はあいまいに微笑した。

話は蛍へと移り、時間が遅すぎるが、庭に下りてみることになった。

もしかしたら気紛れな蛍の光を見れるかもしれない。

しゃべりながらゆっくりと坂を下りていく。

暗闇に紛れて春香とキスをすると、彼女は華やいだ笑い声をたてた。

可愛いなと思う。

とても感情表現がわかりやすくて楽だ。

涼は微笑した。
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