The side of Paradise ”最後に奪う者”
大丈夫か。
腕が動きたがる。
彼女の腰に手を回して支えたがる。
背中を見送っていると春香が見上げた。
「駄目ね。
やはり時間が遅すぎたみたい。
蛍が光らないわ」
涼は慌てて見下ろして微笑した。
「うん。
また日を改めて来よう」
「そうね」
涼は春香を先に階段を上がらせ、川下への道に視線を戻して綺樹の背中を見
送る。
大丈夫だろうか。
暗いし、あの足取りで踏み外したりしないだろうか。
なんだか心配でしょうがなかった。