The side of Paradise ”最後に奪う者”
背を向けた。
一瞬だけでもまぶたに二人の残像がこびりつく。
綺樹は歩き出した。
早く逃げないと。
声などかけられたくなかった。
記憶が無いながらも前妻と知っていて、そして今は全く関心がない。
そんな涼に礼儀的に声をかけられ、相手の女性を紹介される。
綺樹は階段までたどり着くと見上げた。
険しいな。
この道は思ったよりも険しい。
私は進めるのだろうか。
右手に更に川下へ行ける道が伸びているのに気が付いた。
足を向ける。
そうだ、こういう道もあるのだ。
口元にかすかに笑いを浮かべた。
こういう楽な道。
顔を背けて、ひたすら転がり落ちていく。
Rolling down,down,down・・・。
綺樹は呟きながら暗がりの中へ進んでいった。