The side of Paradise ”最後に奪う者”
「いや」
とても苦い思いになる。
「一刻も早く思い出していただかないと、綺樹様が持ちません」
聞かれまいと小声で切羽詰って言う。
「どういう・・」
グレースは黙り込んだ。
「今回の休職とビジネススクールの入学はさやか様の最終手段なんです」
ちっとも話の内容がわからない。
背後で声がした。
「西園寺様ですが」
多分彼女は出ないと身振りをしたのだろう。
グレースが綺樹に何か懸命に言っている。
「はい」
ため息交じりの愛想のない声だった。
寝起きのぼんやりとした感じ。
でも、彼女の声だ。
涼は目を閉じた。
体に沁みるような感じがする。