神の愛し子と暗闇の王子
瞼を閉じていても尚分かる強い光に、少女の意識はゆっくりと浮上する。

重たい瞼を押しあけて、ぼんやりとする視界に始めに入ったのは真っ白な天井だった。

てっきり鬱そうと覆い茂った木々の枝が見えると思っていた少女は予想外のそれに目を丸くし、更には自分の身体がかなり柔らかなものに挟まれていることに気づき驚愕でずさっと上半身をして後ずさる。

狭いベッドの上であろうことか壁とは真逆の方向へ後ずさった彼女の身体は、宙に飛びだし支えを失った彼女は真っ白な床に吸い込まれるように背中から文字通り、落下した。

咄嗟のことに受け身を取りそこなった少女は背中を強打し、息を詰め背中に感じる鈍い痛みに顔を歪める。



「ったぁ……」



背中を抑えながらのろのろと上半身をおこし、少女は改めてあたりをきょろきょろと見回す。

白一色の部屋。唯一違う色はベッドを囲むようにして閉じられたベージュのカーテンだけだ。

(……保健室?)

小首をかしげて、少女は閉められたカーテンを少し摘まむと隙間を作り、そこから外を確認する。

見えるのは、机と薬品の並べられた棚。それから、時は残念ながら見えないけれど本棚と思しき物。それらはすべて白で統一されている。

唯一の色味はかろうじて見える観葉植物で、保健室然としたその光景に少女は数度瞬きをした。

ここは、どこかの学校と保健室と捉えても良いのだろうか。

そう捉えざるを得ない光景に困ったように笑みを零して、彼女は摘まんでいたカーテンを離してベッドに腰掛ける。

でも、だとすればどこの学校なのだろう。

軽く握った手の人差し指を唇に添えるようにして、少女は考え込む。

確か、自分が迷ったあの森の近くに学校などなかったはずだ。

あったものと言えば、明らかに誰も住んでいないだろう古びた家々と、黒ずんだ電信柱のみ。

あそこに人が住んでるなんて到底思えないし、ましてや森に誰かが近づくなんて論外だ。








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