神の愛し子と暗闇の王子
ならば、一体ここはどこで誰が運んでくれたのだろう。

考え込んでいると、不意に前方のカーテンが音を立てて開かれた。

驚いて顔をあげると、そこには黒髪の美少女が立っており少女は思わずマジマジと彼女を凝視した。

緩くウェーブのかかった艶やかな黒髪に、白雪のような白い肌。

理知的な瞳は人間離れした紫。すらりとした、けれどきちんと女性らしさのある身体に、少女は思わず自分の身体を見下ろし、がっくりと肩を落とした。

絶世の美女とは、まさに彼女のような者のことを言うのだろう。

下手をすれば有名なモデルよりも美人な彼女は、少女の姿を認めるや否やににこりと微笑した。



「あら、起きていたの? 気分はどう?」

「大丈夫です。……あの、ここは?」



戸惑いながら疑問を口にすると、彼女は一度室内をぐるりと見渡し「ここね」と呟いた。



「学校よ。狭間ノ学園と言うの」

「は、狭間ノ……?」



聞いたことのない名前だ。

彼女の言葉を反芻し、少女は小首をかしげる。

新しく出来た私立高校だろうか。

考えていると、黒髪の少女は淡くほほ笑む。


「知らないのも無理はないわ。ここは少し特殊な学校で、人にはあまり知られていないの」

「へぇ」


相槌を打ちながら、少女はじわりと嫌な予感が胸の中に拡がって行くのを感じた。

ジワリジワリと、大きくなっていくその染みに、次第に鼓動が速くなる。

――彼女の予感は、ほぼ百発百中だ。

昔から危険な目にあってきたため、そういうことには敏感な体質になってしまった。

じわり、と額に嫌な汗が滲む。

こうなってしまえば、目の前の彼女の笑顔すら恐ろしい。





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