【完】私は貴方を愛せない
彼がお風呂から出てくる頃には私の作ったカレーライスが出来あがっていた。
「おっ今日カレー?」
「うん」
「じゃがいも入れてないよね?」
「もちろん」
彼の料理の好き嫌いも結構分かってきた。
じゃがいもなしカレーなんてカレーじゃないと思っていたけれど、今では私も大好物だ。
「ふぅ・・・あっ杏奈風呂入る?」
「私後でいい」
「そっか。分かった!じゃあ飯食うか」
お風呂上がりのシャンプーの香りを漂わせ、祐樹はワインセラーに入っていたワインを取りだし机の上に置いた。
「カレーとワインっておかしいかな?笑」
「分かんない笑」
「だよ、な。でもまぁいいか!」
「うん」
机の上にカレーとサラダを乗せる。
「ごめんね。今日はすごくシンプルで」
「いいよ。いつも豪華だし、たまにはこういう懐かしい味もね」
私が椅子に座ると祐樹も向かい側に座った。
そして、二人のワイングラスにワインを注ぐ。
「乾杯しようか」
「・・・乾杯」
カチンと静かな部屋に響くグラス同士の音。
彼はなぜかワインを一口も飲まずカレーをスプーンにすくって食べた。