【完】私は貴方を愛せない
「・・・あっ」
私は思わず声をあげる。
しかし、祐樹は何口も何口もカレーを食べ続ける。
そんな姿を見て少しだけ私の中に淡い希望が生まれてきた。
あの小瓶の中身はただの水だったんじゃないか。
全ては祐樹のドッキリだったんだ。
私がそう口を開こうとしたその時。
「・・・ぐっ」
平然とカレーを食べていた彼の顔が苦しみに歪み始める。
両手は首をかきむしるように、目は血走っていた。
「祐樹・・・!!!!」
私は慌てて水道でコップに水をくみ、祐樹に渡す。
彼に飲まそうとしても飲んではくれなかった。
「・・・あ、あん、な」
「何?何??祐樹??」
「・・・あり、が、とう」
「えっ?」
「俺、やっと、罪を・・・償える」
「・・・祐樹!!」
「杏奈・・・」
「ごめんなさい。・・・私!」
「・・・寝室、ベッドの・・・枕」
「寝室のベッド?枕?それがどうしたの?」
「次は、杏奈が・・・幸せに・・・」
そう言い残すと彼は安らかな笑顔で瞳を閉じた。
さっきまで苦しんでいた姿が嘘のように、綺麗な笑顔でこの世を去ったのだ。