【完】私は貴方を愛せない
「・・・杏奈さん!?」
吉崎さんのうしろには自分の中で割り切ったはずの斗真君が立っていた。
肩で息をしている。
走り回っていたのだろうか。
「と・・・先輩?」
「よぉ瀬川」
「なんで二人が・・・!っていうか杏奈さん!携帯繋がらなくて焦りました!今まではかろうじて繋がってたから」
真剣な顔で、でも少しあわてて。
汗だくになりながら私に話す斗真君。
私はにっこりほほ笑んだ。
「私これから吉崎さんとデートなの」
笑顔の裏に復讐の顔があるとも知らず、斗真君は言葉を失った。
「嘘だ」
「嘘じゃないわ」
「嘘だ!」
「斗真君」
「先輩!嘘だって言ってください!!!」
斗真君が吉崎さんに掴みかかる。
けどすぐに吉崎さんは軽く斗真君の腕を振り払った。
「大事な人との時間を後輩に邪魔されたくない。お前はさっき彼女と一緒にいただろ。・・・もう前田さんの事は諦めろ」
「・・・あれは!」
斗真君は私に向き直り弁解をしようとしてくる。
しかし、吉崎さんの腕に引き寄せられ私は彼に抱かれる形になっていた。