【完】私は貴方を愛せない
「あかねは俺の事を兄のように慕ってくれていた。そのおかげか知らないけど、後輩の面倒見や子供の面倒見も良くなって、将来は保育士になりたいと言っていた」
少し落ち着いたのか吉崎さんは私から離れた。
さっきまでの勢いに私の体は震えあがっている。
「だけど、一つだけ心残りがあったんだ。あかねには」
「心、残り?」
「あかねはその涼介ってやつが好きだった」
「・・・え!?」
私はその言葉を聞いて唖然とした。
あのあかね先輩が?
涼介を?
そんなそぶり全然なかった。
この人が言っているのは嘘なんじゃないかと思うほどに。
「お前には分からなかっただろうな!もちろんその涼介ってやつにも」
そうだ。
あの頃は涼介の事を見るのが精いっぱいだった。
そんな私たちをあかね先輩がもっと近づけてくれたんだ。
「後輩だったお前の事も好きだったから気持ちを伝えられなかった。涼介の事も気持ちを隠したまま。どれだけ辛いか分かるか?お前に!!」
「・・・私」
「あかねはそれでお前らの仲をとりもっていた。俺はあいつから何度も悩みを聞いていた。泣きながら話していたんだ」
「気付かなかった。気付いてあげられなかった」
「そうだよ・・・!だから俺は復讐したんだ。今のお前のようにな」
「・・・」
「涼介を諦めきれずに、顔や雰囲気が涼介に似ている男を高校卒業してから恋人にした。あかねは幸せそうだった。でもそんなのはまやかし。・・・あいつはあかねを妊娠させるだけさせといて逃げたんだよ!」
「嘘・・・!」
「保育士の夢も諦め、せめてもと言う事でお腹の中の子供を一人で育てるってあかねは決めた。その子だけが唯一の希望だった。・・・でも結果は流産」
もう聞きたくなかった。
あかね先輩のことを思うと胸が苦しくて。
気付いてあげてれば。
私が、気付いてあげてれば。
・・・気付いていたら、私は何かできたのだろうか。