【完】私は貴方を愛せない
お父さんとお母さんと私は
まるで友達のような家族でもあった。
友達からは本当に仲がいい家族と言われて評判も良かった。
幸せだったんだ。
心からそう言える。
「おい、何考えてんだ。集中しろ」
「あっうっ・・・」
「ほら、口開けろ。ん?ここ触られて感じるか?」
「あっ・・・あっん」
だからこそ。
今の私を見たらお父さんもお母さんも悲しむだろう。
涙を流したり。
怒ったり。
・・・むしろ怒ってほしい。
私を思って泣いてほしい。
大丈夫だよって
私を優しく包み込んでほしい。
その願いは叶うわけもない。
なぜなら、私が高校を卒業すると同時にお父さんとお母さんは死んでしまったのだから。
私の卒業式に向かう途中。
優しいお父さんとお母さんは
通りすがりの男性三人組を車に乗せて近くの病院まで向かっていたらしい。
でも、その男たちはけが人がいたわけでも
病人がいたわけでもなかった。
ただ金が欲しかった。それだけ。
たったそれだけの事で
私のお父さんとお母さんを
車の中で殺して、海に投げ捨てた。
私が最後に見たお父さんとお母さんの元気な姿は「いってらっしゃい」と朝手を振る姿だった。
これがまさか最後になるなんて思わなくて、私は小さな声で「いってきます」と言ってしまった。
どうせ後で卒業式の時に会うんだから。
そう思って。