【完】私は貴方を愛せない


「私も、貴方が好き」


「・・・杏奈さん!」


私はもたれかかるように斗真君に抱きついた。

彼も私を受け止めてくれている。



「絶対に離さない。貴女を幸せにするまでは」


「もう幸せだよ斗真君」


「・・・違いますよ。もっと幸せにするんです」


「ありがとう」




わずかな間の幸福を私は噛みしめた。


そして自殺現場を調べる為に、警察がぞろぞろとビルの中に入ってくる。




「あ、警察が入ってきましたね。・・・杏奈さん、貴女は俺が守りますから」


「・・・」


「杏奈さん?」



私は首を横に振った。

ゆっくりと。



「なんですかそれ。・・・まさか死ぬとかじゃ」


「死なないわ」


「じゃあ・・・!!!」


「ごめんなさい。貴方と一緒に生きたいからこうするの」


「・・・え?」



私は斗真君のズボンの中に入っている手錠を確認して、手に取った。


「そ、それは!」


「つけてくれる?斗真君」


「・・・駄目だ。俺にはできない」


「刑事でしょ?貴方」


「・・・そうだけど!!」


「私はもうすでに三人も人を殺してしまったの。このまま罪を償わず生きていくなんて事したくない」


「いいんですか・・・?」
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