【完】私は貴方を愛せない
しっかりと頷く私。
もし、三人目の柳沢祐樹に出会っていなかったら私は復讐に罪を残さずに生きていただろう。
そして
もし、斗真君と出会っていなかったら・・・。
私はこうやって過去の罪を償うために自分から手錠をかけてもらうなんて、なかったはずだ。
「斗真君は待ってくれてなくてもいいから。でも、刑務所の中で貴方の事を想わせてほしい」
「杏奈さん。何馬鹿な事言ってるんっすか?」
「え?」
「俺は何年も、何十年も、何百年も待ってますよ」
「・・・嘘。何百年なんて死んじゃうでしょ」
「そりゃそうっす笑!そのくらいの勢いで待ってるって事っすよ」
「貴方の為に帰ってくるわ」
「待ってます」
優しい笑顔で斗真君は私の両手に手錠をかけた。
ふわっと体の中の黒い何かが無くなって、軽くなったような気がする。
やっと復讐と言う名の悪魔から解放されたのかもしれない。
「杏奈さん。杏奈って呼んでもいいですか?」
「さっき一回だけそうやって呼んだくせに笑」
「そ、そうですけど!!」
「いいわよ。むしろ敬語もやめて?」
「・・・ようやく近づけた気がする」
「そうね」
斗真君は私に優しいキスをする。
温かな彼の気持ちが私の中に伝わってくるようだ。