【完】私は貴方を愛せない

私は既に一人の男を殺している。

誰にも知られないように。


今あの男の死体はお父さんとお母さんを沈めようとした海の中だ。



そういえばこの前テレビでやってたなぁ。

【大人気アクセサリー店の店長失踪!!!】


新聞にも載っていた。


私だけが彼の居場所を知っている。



彼を殺すのはとても簡単だった。

アクセサリー店のバイトとして入り込み、店長の彼にありもしない恋愛感情を見せつける。


何回か体を重ねデートにも行った。

自分もアクセサリーが好きだと言って、高級なネックレスやブレスレットを身につけたりもした。


彼は次第に心を許してくれ、結婚の話まで出してくるようになった。


そして私は頃合いを見計らい
念入りに犯行を計画して彼を殺した。

殺害方法は刺殺。



死ぬ寸前の彼の目はとても悲しそうだったのを覚えている。


『杏・・・?』


私の名前を呼ぶ彼の声、姿が頭の中に浮かび上がる。


最後の最後まで彼は私を信頼していたのだろう。



息絶えるまで私に助けを求めていたのだから。
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