【完】私は貴方を愛せない
「どうしたの?」
「あっはいっ」
私は彼に声をかけられ、椅子に座る。
「僕の事は誠って呼んでくれてもいいから」
「恐れ多いですよそんなの」
「何それ笑。僕も普通の人間だよ?」
「分かってますよ」
「本当かなぁ?」
彼は意地悪そうに笑い私の向かい側の椅子に座った。
「あっそういえば君の名前を聞いてなかったな」
「・・・杏奈です」
「杏奈?名字は?」
「名字は好きじゃないので教えたくないです」
「好きじゃないの?」
「ええ、過去に色々とあったので。仲のいい仕事仲間にも教えてません」
「そっか、分かった。じゃあ杏奈ちゃんだね」
名字を知られれば、
もしかしたら過去に犯した過ちを思い出して私を警戒するかもしれない。
それは避けたかった。
だから一人目の復讐の時も名字を教える事はなかった。