【完】私は貴方を愛せない
数分後、店員の人が美味しそうな料理を運んできた。
何皿かを机の上に置き
ワイングラスにワインを注ぐ。
店員の人は会釈をして個室の外に出て行った。
「私たちメニュー見てませんよね?」
「ああ、ここは僕が最近趣味で出した店だから」
「ええっ」
「だから、僕が来たときはいつもおすすめのメニューをと料理人に言ってあるんだよ」
「そうなんですか?」
「うん。だからぜひ、食べてみてよ。お口に合えばいいけど」
食べ物の味を感じる暇はなかった。
この人がどうすれば私に心を許してくれるようになるか。
それをじっくり考えなければいけなかったから。
話し方から仕草まで
私は彼の至るところまで観察をした。
他愛もない話の内容なんて覚えていない。
その場しのぎの会話なんだから。
「美味しかったです」
「それは良かった」
「あの、お金はいくらほど出せばいいでしょう?」
私の言葉に彼は苦笑した。
「いらないよ?」
「でも・・・」
「女の子にお金を出してもらうなんて男としてあり得ない」
「そんな!!」
「そこまで気になるならさ。僕がお金を出す代わりに、今度僕の家で手料理でも作ってよ」