【完】私は貴方を愛せない
「俺、本当は昔杏奈さんに会った事あるんっすよ」
「・・・え?」
突然の話に私は驚いた。
しかも私に会った事があるという事に。
「俺が高1の時。杏奈さんは同じ高校の制服を着た男子と一緒に歩いてました。その時の杏奈さんの笑顔を見た瞬間、俺の心に激痛が走りました」
「・・・私が高3の時ね」
「はい。なんて素敵な笑顔なんだろうって。俺にだけあの笑顔を見せてほしい、そう思いました。だけど先輩だし、勇気もなかったんで心の奥に封印しました」
卒業式までは私普通に幸せだったから・・・。
きっとその隣にいた男子は高1から付き合っていた彼氏。
深田涼介-フカダリョウスケ-
別れを思い出したくもない。
私は彼と最初で最後の本気の恋をしたつもりだ。
まさか斗真君の話で彼を思い出す事になるなんて。
「その時、俺を傍で支えてくれたのが今の彼女です」
「結構続いてるのね。すごいじゃない」
「・・・いえ。結局彼女も杏奈さんの代わりでしかなかったっす」
「駄目よ。私は」
「一目ぼれでした。杏奈さんが卒業するまでずっと遠くから見てました。彼女がいてもやっぱり杏奈さんばかり目で追ってました。そして、今杏奈さんに出会って・・・あの頃の勇気を今出すしかないって思ったんです」
「でも、駄目。私は駄目なのよ」
「・・・こういう店で働いてるから、そういう理由なしで俺を説得してみてください」
「・・・っ」
「言えませんか?」
「・・・」
「俺を利用してくれてもいい。傍にいさせてください」