【完】私は貴方を愛せない


「えっと・・・前田杏奈さん、ですよね?」


「はい」


「僕の名前は吉崎匠-ヨシザキタクミ-と言います。で、こいつの名前は瀬川斗真-セガワトウマ-。この度は大変な目に合わせてしまいまして・・・。申し訳なかったです」


吉崎さんが深く頭を下げたのを見て
急いで瀬川さんも頭を下げる。



「違法なお店だと、元々前田さんは店側におっしゃっていた。更には警察にまで相談されていたのに・・・。結果、このような事になってしまって。もう少し遅かったらどうなっていたか」


「・・・いいえ。いいんです。私も落ちに落ちた身です。私の声を聞いてくださらなくても当たり前です」


「・・・本当にすみませんでした」



私がお店に訴えていた事も
警察に訴えていた事も
全て本当。
私がはしたない店の店員である事で
警察が耳を貸してくれなかったのも本当。

だけどこれも計算のうち。


お金さえ入れば私はどんなに汚れた仕事だって構わない。


・・・本当に私は落ちるところまで落ちてしまったんだから。





「前田さん!!」


「・・・え?」



私は何度も警察のこういう対応を見てきた。

だから計算のうちに入っている。



なのに今日この日。

全く予想外の刑事に私は出会ってしまった。



「俺は、前田さんはとても綺麗だと思います。落ちてしまった身なんてありえないです!!俺から見たら新品も同様です・・・!だから自分の事、そんな風に言うの止めてください!!!」


そう、彼。


新人刑事の瀬川斗真(23)
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