【完】私は貴方を愛せない
「い、今のはね!?違うの!!!」
私は深田君に背を向けてユニフォームを再び洗濯機に入れ始めた。
動揺で手が震える。
こんな事言うはずじゃなかったのに。
キュッキュと水道を止める音が隣から聞こえる。
深田君は何も言ってこない。
・・・あまり話した事もないのに、あんな事言われたって嬉しくないよね。
出しゃばりすぎちゃったな。
嫌われちゃったかもしれない。
「前田」
「な、何?」
「お前も可愛いし、健気だし。俺も好きだよ」
思わぬ言葉に私の手が止まる。
余計に深田君の方を見れなくなった。
「じゃあ俺、練習戻るから。前田も無理せず頑張れよ!」
「・・・あっ」
深田君が行ってしまう。
そう思って私は振り向いた。
走り去る深田君の横顔。
一瞬だったけど、耳まで真っ赤になっていた気がした。
「深田君・・・」
この時の胸の高鳴りは憧れとかじゃなくて、ちゃんとした恋の音だと気付いたのはすぐだった。