【完】私は貴方を愛せない
数日後。
私は野球部の先輩に帰り際で声を掛けられていた。
「杏奈ちゃんさ、彼氏いないんでしょ?」
「いないですけど・・・」
「じゃあちょっとだけ!俺と今から遊びに行こうよ」
「あ、あはは・・・」
「あかねっていううるさいやつもいないし、いいじゃん!」
そう。
野球部の先輩に声をかけられた時は、必ずあかね先輩が助けてくれる。
でも、今日に限って生徒会でいない。
私と同じクラスの男子達もそそくさと帰っていく。
クラスメイトってだけだから助けてくれるわけないよね。
私は観念して頷きかけた。
「前田!」
その時。
私に気付いたのか、深田君が声をかけてきてくれた。
「なんだよ深田ぁ!俺今から杏奈ちゃんとな・・・」
「先輩。さーせん!俺が先約なんっすよ!この埋め合わせはいつかするんで!」
深田君はそう言うと私の手を掴んでその場を走り出した。
「おい!深田!」
先輩の声が遠くなっていく。
知らないふりをした男子達を追い越して、私たちは走った。
私を引っ張って走る深田君の姿。
すごく嬉しかった。