【完】私は貴方を愛せない
あれから1か月後。
私は無事退院し、"お客さん"だった無実の加害者から奪い取った10万円を自分の口座に振り込んだ。
私の口座にはおよそ5000万円という数字。
それを見てため息をつく。
「まだ足りないわ。全然」
私はある目的の為にお金をためている。
実行できたのはたったの1回。
最低でもあと3回は同じ事を繰り返さなければいけない。
1億。
2億。
それくらいの額さえあれば"あの男たち"に近づく事も出来るから。
「あのー!」
「きゃっ!」
考え事をしていた私は声をかけられた事にびっくりして思わず変な声をあげてしまった。
「あっすいません!俺です!斗真です!」
「斗真・・・?」
「覚えていませんか!?刑事の・・・ほら!」
茶髪のふわふわした髪に
可愛らしい顔。
体つきは意外に男らしい。
格好は今時の若者の男性ファッションだ。
「そんなにじろじろ見ないでくださいよ!恥ずかしいじゃないっすか!」
手で頭の後ろをポリポリとかきながら彼はそう言った。
「・・・ああ、あの時の」
「思い出してくれましたか!」
嬉しそうに大声を出す。
周りの人が少しだけざわつく。
「あの、声。もう少し・・・」
「どうせですし!そこらへんの喫茶店でお茶しません?俺おごりますから!」