【完】私は貴方を愛せない
「大丈夫、大丈夫」
優しい声で私を安心させようとする斗真君。
これじゃあどっちが年下だか分からない。
そもそも子供っぽい斗真君にこんな風に慰められてる私は・・・。
「・・・もう少し、このままでいさせて」
私は斗真君の背中に手をまわした。
「もちろんっす」
「ありがとう」
「・・・はい!!」
どうして斗真君の腕の中はこんなにも心地よいのだろう。
離れたくない。
もう復讐なんて考えず、ずっとこの人の腕の中に抱かれていたい。
そんな天使のささやきが聞こえた。
「・・・駄目!」
私は思わず斗真君を突き放していた。
いきなりの事に斗真君もびっくりしている。
でもすぐに笑顔になった。
「もう大丈夫ですか?杏奈さん!」
甘くて優しい笑顔を私に向ける。
私はとても切なくなった。
きっとこのまま斗真君と一緒にいたら私は恋に落ちてしまう。
ううん、もしかしたらもう落ちているのかもしれない。
涼介と重ねて見ているのもあるんだろうけれど・・・。
あまり近づき過ぎたらいけない。
私はそう心に誓った。