【完】私は貴方を愛せない
「あ・・・」
目を覚ますとそこは病室だった。
体中が痛い。
よく見ると点滴や自分の体には包帯がたくさん巻かれている。
「そっか、やっぱり夢だったんだ」
だけど久しぶりに顔を見る事ができた。
・・・私の心が作りだした幻想だとしても。
コンコンとノックがされ、病室の扉が開いた。
「杏奈さん!」
「斗真君?」
「目が覚めたんですか!?よかった・・・。今担当のお医者さん呼びます!」
斗真君は急いでナースコールを押した。
手には綺麗な花束。
「お見舞いに来てくれたの?」
「そりゃもう毎日!自分じゃ分からないかもしれないけど、杏奈さんもう一週間も目を覚まさなかったんっすよ」
「・・・そ、そんなに?」
「お店の店長さんも仕事が忙しい中毎日来てくれてます。あのお店なら、俺も安心して杏奈さんを任せる事ができます!!」
そう言って持っていた花束を近くの花瓶に入れる斗真君。
「この花はその店長さんからです」
店長・・・。
私はそこまでしてもらうほどの女ではないのに。
体調が戻ったらちゃんとお礼を言おう。
そして、しっかり働くんだ。
復讐のためだけじゃなくて迷惑をかけてしまった店長のためにも。