【完】私は貴方を愛せない
それから入れ替わりのように担当の医者が入ってきた。
容体を聞かれ、体に塗る薬や飲み薬も朝昼晩と渡される事を言われた。
「幸い一週間ほどで退院できますね。ただ、体の傷は一カ月ほど残るでしょう。少し気になるかもしれませんがまだお若いので治りますんで、安心してください」
優しい年配のお医者さんだった。
私は体の傷が消えると聞いて安心する。
「じゃあ病室の前で待ってる彼氏さん呼んできますねぇ」
「か、彼氏じゃないです」
きっと斗真君の事だろう。
・・・そう見えちゃうのだろうかやっぱり。
「そうかい?毎日毎日容体を聞きにくるし、病室にも行くし、真剣な表情だからてっきり・・・」
「そう、ですか」
「ほいじゃ、また様子見に来るね」
「はい」
扉の方で斗真君がそのお医者さんに深く頭を下げていた。
にこにこと年配のお医者さんはその姿を眺めている。
話が終わった様で、斗真君が病室に入ってきた。
「杏奈さん大丈夫ですか?体の方は・・・先輩に色々聞かれて疲れましたよね?本当すみません」
「ううん、全然平気。むしろほとんど聞かれなかったの」
「・・・じゃあなんで」
「分からないわ。・・・でも、とりあえず体中は痛いけど体調はいいの」
「なら良かったっす」
人懐っこい笑顔を浮かべ斗真君はベッドの横の椅子に座った。