【完】私は貴方を愛せない
彼にはきっと長い時間に感じたのだろう。
数秒固まっていた。
「ありがとう。すごく嬉しい」
斗真君はゆっくりとこっちを向いて目を輝かせていた。
「は、はい!!!!」
「今はこんな包帯ぐるぐる巻きで、綺麗でもなんでもないし。元から汚いんだけど・・・。ごめんね、いきなりキスなんてして」
「いや、もう。俺には最高のお礼ですっ!!これでご飯なんて食べなくてもいいほど!!」
「大げさだよ笑」
吉崎さんの言うとおり。
私は徐々にだけど絶対に斗真君に惹かれている。
彼には彼女という保険を残しておいてと言っておきながら、絶対に好きになってはいけないと思っておきながら・・・。
もうこれ以上近づかないでおこう、そんなのは無理な話だったのだ。
きっと好きになる。
絶対に好きになる。
愛してしまう。
愛してはいけないのに。
私と斗真君は絶対に愛し合ってはいけないのに。
だって私と貴方の間には───。
警察と犯罪者という壁があるんだもの。
絶対に越えられない正義と悪の壁が・・・。