【完】私は貴方を愛せない
「アイスコーヒー1つ、オレンジジュース1つにホットケーキとチョコパフェ1つずつください!」
「かしこまりました」
店員さんが斗真さんの言葉を復唱する。
オーダーを言い終わった後、また軽い会釈をして厨房に消えていった。
私はその姿を目で追っていると、
目の前にいる斗真さんから視線がきた。
「な、なんですか?」
「あっすいません。つい・・・」
「つい?」
「やっぱり、綺麗だなぁって」
「・・・綺麗なんかじゃないんですけどね」
「本当に綺麗ですよ前田さんは!」
机を思いっきりバンっと叩いてそう強く断言する。
思わず立ってしまっていた。
近くにいたお客さんは驚いてこちらを見てきた。
「と、斗真さん」
私の名前を呼ぶ声で周りの視線に気付いたのか、斗真さんは「す、すいません」と言って静かに座った。
「あの、ずうずうしいかもしれないけど・・・。俺の事さんづけしなくていいんで、俺も前田さんの事杏奈さんって呼んでいいっすか?」
純粋な瞳がまっすぐ私に向けられている。
どうしても断る事はできなかった。
私は首を縦に振る。
「やったぁ!」
「声、大きいかも」
「あっ」
「斗真君って・・・なんか本当子供みたい」
私が君付けした事に少しだけ不服だったのか、顔は少しだけ面白くなさそうだった。
だけど、すぐに笑顔になって
「よく言われます!」
と言ってきた。