【完】私は貴方を愛せない
この人が結婚している事は前々から分かっていた事だ。
・・・けれど、ずいぶんな愛妻家であり子煩悩でもあるようで。
キャバ嬢が言い寄っても相手にせず、ふんわりと断るそうだ。
きっと今までの中で一番強敵なのかもしれない。
「結婚、なされてるんですか?」
私はもう知っている事を少しだけ切なげに言ってみた。
彼は笑顔で「そうだよ」と答えてくる。
「そうなんですか・・・」
「子供もいてね。これがすごく可愛いんだよ!!」
「私も子供欲しいです」
「じゃあ早くキャバ嬢なんてやめていい人見つけなきゃ!そのためにも夢を頑張って叶えるんだよ?」
幸せそう。
私の幸せを奪っておきながら。
・・・どうしてそんなにも笑えるの?
いつまでたっても私は不幸という足枷を外す事ができないのに。
もう人を二人も殺した。
犯罪者、殺人者というレッテルは一生付きまとう。
なのにこの人は私の事を知らずに。