【完】私は貴方を愛せない
「・・・とりあえず。シャワー浴びてくるよ」
「はい」
そう言ってお風呂場に向かう柳沢さん。
けど、すぐ振り返ってこう聞いてきた。
「昨日の事。誰にも言わないでくれ」
「・・・え?」
「俺達の秘密にしてくれないか?」
「・・・それは、いいですけど」
「ありがとう。助かるよ!!君のお願いは何でも聞くから。頼んだよ」
だったら今すぐに死んで。
そう言いかけた言葉を飲み込み、彼の言葉に頷いた。
私はバックを手に取りぎゅっと握りしめる。
作戦が成功するかは分からない。
彼の家族の絆がどれほどのものなのか知らないから。
・・・けれど、壊してやる。
壊してから彼自身を壊してやる。
私の不幸を身をもって感じればいいんだ。
そんな時も浮かぶ斗真君の姿。
『杏奈さん。もう、こんな事止めましょうよ』
きっと私がしている事を知ったら、こう言うんでしょう。
・・・やめたいよ?
今すぐにでも。
斗真君の気持ちに答えて、普通の生活に戻りたい。
幸せを感じたい。
だけどもう。
止めることなんてできないの。