【完】私は貴方を愛せない
それから。
私と柳沢さんの秘密は守られた。
ただの店のオーナー兼社長と従業員のキャバ嬢。
それだけの関係だと周りには認識されている。
けれど、それも今日で終わりだ。
私は写真数枚と一枚のDVDを茶色の大きい封筒に入れ、【柳沢】と書かれた家のポストに入れた。
自分の指紋も全て拭き取り、手袋もしてポストに入れた。
家で何回も編集したあの日のDVD。
そして写真。
決定的な瞬間ばかりをとらえている。
三日ほど前にも私に脅迫状とそのDVD、写真数枚が送られてきたと柳沢さんに報告してまるで被害者のように装っておいた。
彼はそれを信じて私の身を案じてくれた。
しかし、それ以上に家族を心配している様子だった。
いや自分の心配だろうか。
もしも家族にそんなものが送られてきたらと思うとぞっとするのだろう。
店に出勤している時も落ち着きがなかった。