【完】私は貴方を愛せない
そして、数日後の柳沢さんはひどく店で取り乱していた。
荒れているとでも言った方がいいのだろうか。
「お前!!そっちは違うだろ!何度言ったら分かるんだ」
「す、すいません」
「おい・・・この酒俺が言っていたのと違うだろ。何してるんだよ」
「今すぐかえてきます!!!」
キャバ嬢の間でもそれが話題になっていた。
従業員に対してあんな態度をとった事がないあの柳沢さんが・・・。
そんな風に。
時間がたち、客がまだまばらな時間帯に柳沢さんの奥さんは店へとやってきた。
両脇には子供が二人いる。
それを見た柳沢さんは急いでその三人の元へ駆け寄った。
「どうして店に来たんだ」
「貴方にこれを渡すためよ」
奥さんが取りだしたのは離婚届。
目の前の出来事を見て柳沢さんはその場にがくりと座り込む。
「子供の親権は私がもらう。ハンコも名前ももう書いておいた。・・・あとは貴方の分をよろしくね。明日にはそれ出しておいて」
そう吐き捨て、離婚届を彼の目の前に捨てた。
「パパぁ~」
「ママ、パパ置いていっちゃうの?せっかく迎えに来たのに」
そんな子供の言葉を無視して奥さんは店を出ていく。
柳沢さんはただ茫然と座り込んでいた。
一筋の涙と共に。