【完】私は貴方を愛せない
「・・・どうしてって顔してるね」
「・・・」
「君が俺の店に入店してから分かっていた。君があの両親の子供だって事も、俺に復讐するために動く事も」
「私は、そんな事」
「いいよ。何も言わないで?分かってる」
「祐樹・・・」
「俺の家庭を壊して、傷心の俺を手に入れて。そして安心させてから殺す。そうしたかったんだよな?」
私は何も言わず、ただ目の前のワイングラスを見つめた。
「分かっていたけど、俺は君にプロポーズしたんだ」
「な・・・んで」
ぼそっと呟くと、彼はふっと笑ってもう一度ワイングラスを持つ。
中に入ったワインを全て飲み干すと「本気になっちゃったから」と言った。
「本気?」
「後悔の念もあるし、君へ謝罪の気持ちもある。俺の一生を君に捧げたところで許されない事も分かってる。だけど、それ以上に俺は君と一緒にいるうちに本気で君を愛してしまったんだ」
「・・・」
「だから、俺は君に殺されてもいい」
「・・・え?」
「もう何も思い残した事はこの世にはない。・・・大切な家庭も、子供もなくなった。そして、嘘だとしても半年間杏奈からの愛をたくさんもらった。だからもういいんだ」
すがすがしい笑顔だった。
私はなんと返していいか分からず、ただ黙っていた。