【完】私は貴方を愛せない
そして
祐樹はあの日以来私とは普通に接している。
私も私でなるべく普通に。
・・・だけどいつも引っかかるのは彼がくれた小瓶。
わざわざハンカチに包んでくれたのにも何か理由がありそうだ。
でも分からない。
分からないといえば他にもある。
何故、私の事を気付いていたのに遠ざけなかったのか。
一緒にいて本気になってしまったというのは分かったけど、でも私と出会った最初の頃はすぐに私を突き放すくらいの事はできたはず。
祐樹が家族を失った日のあの横顔を私はどうしても忘れる事ができない。
あんなにも辛い思いをしたはずなのに・・・。
「どうした?」
私はいつの間にか祐樹をずっと見つめていたようだ。
「なんでもない」と言って目を逸らす。
「・・・まだ、俺を殺さないでいてくれるの?」
「・・・」
「あえてこの事に触れてこなかったけどさ。結構意外。杏奈は復讐のために俺と一緒にいてくれてるんだと思ってたけど、もしかして・・・」
「どうしてなんだろうね」
「自分でも分からないのか?」
「貴方を許せない。だけど、このまま復讐を続けてもいいのかって思ってしまう」
「へぇ。覚悟ないんだ?」
「・・・何言ってるの?あるに決まってるじゃない」
「じゃあどうして殺せないんだよ」
「それは・・・」
「俺は杏奈にだったら殺されてもいいんだから」