契約妻ですが、とろとろに愛されてます
入院して一ヶ月半 九月の終わりになっている。


「寒いのは好きじゃないから 寂しいなって」


入院しているうちに季節が変わっていき、なんだか焦りを感じてしまう。思わず琉聖さんに本音をポツリ呟いてしまう。


琉聖さんはベッドに腰をかけると私の肩を抱き寄せた。


「冬になったら暑い所に連れて行こう」


髪の毛にそっと口付けてくれる。


「寒いのに暑いところ?沖縄?でもそんなに暑くないよね?」


私が考えるのを楽しそうに見てから琉聖さんは口を開いた。


「違うよ、オーストラリアだ あそこなら日本と真逆で、日本が冬の時は夏なんだ」


「オーストラリア……そうなんだ 行けるといいな……」


行きたいと思うけれど、まだ退院が決まっておらず現実味がなくて喜べない。


「早く退院したい……」


最近の私はどんどん我が侭になって来ているみたいだ。


あまり良くなっていないことを玲子先生から今日聞いた。あと一ヶ月は入院することも。結果次第では長引くこともありえる。沈む気持ちはどうにもならない。


「もう少しの辛抱だ」


「うん……」


琉聖さんは私から離れると、食事の食べた量や健康状態が書き込んであるカルテを手に取り目を通している。


「ちゃんと食べなくてはだめだろう?」


「身体動かさないから食欲がわかなくて……」


皆に心配をかけているのはわかっているけれど、病院食は味気なく、美味しいとは言えないから、どうにも喉を通っていかない。
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