契約妻ですが、とろとろに愛されてます
琉聖Side


俺が心配そうに見ているせいか、柚葉はあんみつが食べたいと言った。意外にも、ケーキより和菓子が好きだと言う。中でもあんみつは好物だと。俺の知らない柚葉の一面が見えた気がした。


少し経って運ばれてきたあんみつを美味しそうに口に運ぶ柚葉を見て抱きしめたくなる。美味しいと言いながら食べる、そんな姿でさえ愛しい。


「琉聖さんも食べたいですか?」


じっと見られていることに気が付いた柚葉が俺に小首を傾けて聞いてくる。俺があんみつを食べたいと思ったらしい。


「いや、あんみつよりも柚の乗った葉っぱが食べたい」


「えっ?柚の乗った葉っぱ……」


俺の言いたいことがわかった柚葉は口にすると、慌てたように頬を赤らませて指を耳にやる。


「琉聖さん、何を言っているんですかっ」


からかうとすぐに顔を赤らめる柚葉をもっとからかいたくなる。恥じらうと血色がよくなり、病気だということを忘れそうだ。


寿司屋を出た俺たちは駐車した場所までの少しの距離をゆっくり歩く。店を出ると柚葉は俺の腕に自分の腕を絡め頬を付ける。


「気分でも悪いのか?」


珍しく自分から伸ばした柚葉に驚く。


柚葉が首をゆっくり数回振る。


「……病院に帰りたくない」


小さく呟いた柚葉。俺は立ち止まり顔を良く見ようと柚葉を見下ろす。


「柚葉?」


「病院に帰りたくないですっ!」


目と目が合うと、瞳が潤んでいた。大きな目から今にも涙が零れそうだ。


「帰らない訳にはいかないだろう?」


小さな吐息が聞こえる。


「ごめんなさい……困らせつもりじゃなかったの……」


柚葉は俺の腕を離すと歩きだした。


「柚葉!」


先を行く腕を掴むと、周りに人がいるのもかまわずに俺はその場で柚葉を抱きしめていた。


「もう少しの辛抱だ」


柚葉は俺の腕の中で頭を縦に動かした。

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