契約妻ですが、とろとろに愛されてます
「何か予定がない限りずっとだが?給仕を帰したから緊張せずに食べられるぞ」


もうっ!どんな金銭感覚なのっ。


琉聖さんは私を席に着かせると、紅茶を淹れ始めた。


「私が」


手伝おうと立ち上がる。


「ゆずは座っていなさい」


琉聖さんの私を呼ぶ「ゆず」はまだ続いていた。なんだかそれが嬉しい。だけど、このままの関係ではいけない。昨晩、眠りに落ちる前に思った。


「琉聖さん……」


「ん?」


「ありがとう……」


「どうした?ゆず」


私の言葉に食事の手を止めて怪訝そうに見つめる。


今……言わないと……契約を解消してって……。


「ゆず?何か言いたいことがあるのか?」


そう聞いてくれたけれど、どうしても口に出せない。


私は首を横に振ると淹れてもらったミルクティーの入ったカップを口に運んだ。


「……食べたら病院だぞ?」


「……はい」


頷いた時、鼻に伝わるものを感じた。とっさに側にあったナプキンを鼻に当てた。


「ゆず!?」


対面に座っていた琉聖さんが急いで私の元へ来る。


「大丈夫 鼻血……」


「大丈夫なわけないだろう」


琉聖さんはタオルを取って戻って来ると私の鼻にあてた。そしてサイドボードに置いてある車のカギとお財布をズボンのポケットにしまうと、私は抱き上げられた。


「琉聖さんっ!大丈夫だから」


「黙っているんだ」


病院までの約二十分間、私の鼻血は止まらなかった。

< 128 / 307 >

この作品をシェア

pagetop