契約妻ですが、とろとろに愛されてます
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「すぐに連れて来てくれたから良かったわ」


玲子先生の声が眠っていた私の耳に入ってきた。


「外出などしなければ良かった……」


琉聖さんの弱気な言葉にハッとなり重い瞼を開けた。


「違う……外出できて嬉しかった……」


私の声に琉聖さんと玲子先生がベッドの横に来た。


「ゆず、気分は?吐き気はないか?」


琉聖さんは心配そうに私を見ている。


頭の斜め上に輸血バックが点滴スタンドにかけられ、チューブが腕に繋がれているのが見えた。


「輸血のおかげで身体が軽くなったみたい」


私の我が侭でこんなことになってしまい、申し訳なくて玲子先生の顔が見られない。


「柚葉さん、数日はベッドから離れちゃだめよ?」


はぁ~ やっぱりそうだよね……。


「……はい 安静にしています」


「よろしい」


玲子先生は微笑むと看護師さんを連れて出て行った。


******


翌日の土曜日、麻奈と修二さんが一緒にお見舞いに来てくれた。琉聖さんは大事な社用で朝からいない。


「柚葉、どう?ごめんね なかなか来れなくて風邪引いてたから」


麻奈は私の大好きなバラの花束をくれた。


「気にしないで ありがとう 麻奈」


花束を抱えて顔を埋めると、バラの匂いを嗅ぐ。


「それと はい!開けてみて!」


渡されたのは四角い箱。それほど大きくはないけれど少し重さがある。リボンをほどき箱を開けるとあんみつが現れた。

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