契約妻ですが、とろとろに愛されてます
「関係あるわ 琉聖が愛しているのは私なの どうして貴方にここまでやってあげているのか気が知れないわ」


「帰ってください お話することはありません」


知らず知らずのうちにシーツを握りしめていた。


「これを見たらショックを受けると思うけれど、きっと身を引いてもらえると思うわ」


菜々美さんはバッグの中から写真を数枚取り出すと、パサッとベッドの上に放り投げた。


「なんですか?」


「ニューヨークで琉聖が寂しい思いをしていると思う?」


自信たっぷりで、威圧的に言われ私は菜々美さんから手元の写真に瞳を動かした。見たくないのに指はその写真を手にしていた。


「!」


その写真は三枚で、琉聖さんと菜々美さんと歩いているスナップ写真。ふたりがバーカウンターに並んでいる写真。そして金髪の女性と顔が近すぎるくらいに近づいている琉聖さんの写真。


「これ……?」


写真の日付は二日前。


「ニューヨークから戻ってその足でここへ来たから疲れちゃったわ 琉聖はどこでもモテるの この写真だって、この後彼女と寝たんじゃないかしら 浮気しても私はかまわないの それが私達のエッセンスになるから 他の女と寝た後の琉聖の愛し方は……」


「っ!帰ってくださいっ!」


これ以上、菜々美さんの話を聞いていたら気が狂うのではないかと思うほどだった。


「わかったでしょ?琉聖は貴方を愛していない」


菜々美さんが私をバカにしたような笑みを浮かべて見ている。


「傷つけてごめんなさいね?でも本当のことを言わないと気が済まなかったの」


そう言うと菜々美さんは出て行った。


琉聖さんに怒りは感じない。あくまでも私達は契約の関係だから……。


でも菜々美さんの性格は好きになれない。本当に琉聖さんは彼女が好きなの?違う人とならにこやかに笑って別れても良い。だけど彼女だけは嫌だ。


出て行った菜々美さんの甘いムスクの香りが病室に漂っている。その香りは私の胸をツキッと何度も刺していく。

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