契約妻ですが、とろとろに愛されてます
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琉聖さんのご両親に見送られてマンションへ戻る中、いつになく肩が凝っているなと感じた。


無意識で出た小さなため息は運転する琉聖さんの耳に聞こえてしまって心配そうな顔で見られる。


「疲れたんだろう」


運転中の琉聖さんのアンバー色の瞳が私の表情を探るように見る。


「緊張しすぎちゃったみたい」


無事に琉聖さんのお父様と会えたのは良かった。大企業に社長さんだから厳しい人かなと思っていたけれど、緊張している私に笑顔で優しい言葉をかけてくれた。


だけど……不安になる……このまま琉聖さんと結婚してもいいのかと……。もしかしたら私は病気のせいで一生子供を望めないかもしれないのに。


琉聖さんの後を継ぐ子供を産めなかったら……と考えるとこの結婚に踏み切れない。今日、ご両親にお会いしてそんな不安な気持ちになった。


「ゆず、身体の具合が悪いか?……退院したばかりで親父との対面は精神的に大変だったな……」


「そうじゃないよ 緊張したけれど、お父様に会えて良かった 大丈夫 薬もちゃんと飲んでいたでしょ?」


「少しでも身体の調子がおかしくなったら言って欲しい」


琉聖さんの片手がステアリングから離れ、私の髪に伸びる。


「うん そんなに心配しないでね?」


私は琉聖さんに安心して欲しくて笑顔を浮かべた。

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