契約妻ですが、とろとろに愛されてます
琉聖Side


柚葉の電話を切った俺は一方的で可哀想だったかと思ったが、やはり柚葉の身体を考えると重い物を運ぶ買い物などさせない方がいいと考えた。



携帯電話を見つめてから執務机の上に置いた時、壁が叩かれる音が聞こえた。秘書室と通じるドアは今日は開けられており、視線を移すとそこに修二が立っていた。


「何をにやけているんだ?鬼の副社長ともあろうお方が」


修二が茶化す言葉と共に、笑いながら入って来た。


「おい、にやけてはいないぞ?」


修二が黒い革張りのソファに座り、俺も対面に腰を下ろした。


「柚葉ちゃんはどう?」


「今朝、病院へ行ってきた」


「え?退院したばかりだぞ?」


「ああ、昨晩立ちくらみを起こしてね、念の為だ」


濃紺のスーツを着た女性がコーヒーを持ってきた。桜木の下で働いている秘書の関口 美砂子だ。背が高くスレンダーな肢体で暗い色のスーツを着ても野暮ったくなく秘書の中でも有能な女性だ。


テーブルの上にコーヒーを置き、頭を下げると出て行った。


「退院したけどまだまだ心配だな?」


「あぁ なんでも一生懸命やろうとするから止めるのに必死だよ」


柚葉を思い出し、苦笑いをして俺はコーヒーを一口飲んだ。

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